こんにちは、ブランディング企画室です。
「ブラ旅47」、今週もはじまります!
———ブラ旅47とは——————————————————————————-
大和グラビヤのブランディング企画室が日本全国47都道府県の旅に出る企画、
略して「ブラ旅47」!
全国各地の食べ物やお土産や工芸品・・・それらを作っている人たちとの出会いや、
その体験で感じたことや得たものを旅の記録として綴っています。
———————————————————————————————————-
というわけで第16回目の旅は、長野県!
長野県といえば弊社の工場が飯田市にあるので馴染み深いのですが、今回は飯田市よりも
ずっと北の塩尻市へ!
名古屋から車で3時間弱、ドライブには最適ですね!
JR東海の中央本線でも大体同じくらいの所要時間で行けるのでのんびりと電車の旅も
よさそうですよね。
塩尻市の木曽平沢は木曽漆器の産地として広く知られています
そんなわけで今回は漆塗りの職人さんに会いに行きました。
木曽平沢の町に入ってすぐに見つけました!
大きくて素敵な工房…!
こちらが旅の目的地、未空(みそら)うるし工芸さんです。
昔ながらの伝統技法を守り続けながら、ブランドを立ち上げ新たな漆塗りの可能性を
追求し続ける未空うるし工芸。
代表の岩原さんに漆塗りのこと、漆職人になるまでやブランドを立ち上げられた経緯など
色々とお聞きしました。宜しくお願い致します!
1.「jaCHRO」と漆塗り
『かつてない漆塗り製品』をコンセプトに2014年に岩原さんが立ち上げられた
ブランド「jaCHRO(ジャックロ)」
ウォレットやコインケース、キーリングなどの革製品やマグネットなど、
これが漆?と驚くような、漆の新たな可能性を追求した製品を作られています。
「jaCHRO」には漆塗り製品を知らない若い世代にも興味を持ってもらいたい、
という想いが込められています。実際、キーリングやマグネット等は漆製品と
しては安価な為、若い方がお土産に買って行かれるそう。
グラデーションが本当に綺麗なので、写真では伝わりにくいのですが表面がキラキラ
していて見惚れてしまいます…!
ちなみにこのウォレットのようにスパッと色が分かれているものは、グラデーション
以上に技術的に難しいものだそうです。かっこいい!
漆皮という皮に漆を塗り固めるものはあるものの、素材のしなやかさを活かして
革に塗るのは苦労されたそう。最初に作ったプロトタイプはすぐに割れてしまうこと
があったそうですが、それをどうやって軽減させるかを数年間試行錯誤で作られた
とのこと。
結果、長く使っても剥がれたりバリバリと落ちてきたりせず、革同様なじんでいきツヤも
出てくるそうです。
そして制作現場を見せていただきました!
まず素材はヌメ革を使うんですが元々はベージュのような色味です。
その革にこちらでグラデーションの吹付け作業をします。
漆と染料を調合したものをエアブラシを使って模様や柄を付けるそう。
さてグラデーションを付けたあとは…
基本的には最初に色のついた漆を使いあとは半透明の漆を使います。
クリーム色っぽく見えますが半透明の飴色。
薄い塗膜で塗ってふき取っていきます。拭き漆の応用だそう。
(拭き漆=透けた生漆を木地に塗って布で拭き取る作業を繰り返す技法)
おお…さすが職人さん…
そして室(もろ)と呼ばれる箱の中で乾燥させます。
湿度がないと漆が乾かないため水を撒いて湿度を上げます。
乾燥させたらまた漆を薄く塗り…と4~5回繰り返します。
1回だとツヤが出ないので何回も行うとのこと。
この地道で丁寧な作業があの素敵な漆製品を生み出すのですね…!
2.漆職人になるまで
「もともと木曽平沢の生まれで家業が漆塗りの会社だったんですが、高校卒業の時点で
継ぐつもりはなかった」と岩原さん。
建設会社に勤めた後、革小物やシルバーのアクセサリーに興味があったことから
上京し、その商材を扱う販売や制作の仕事も経験したそうですが、25歳の頃
地元に戻り、「バイクが好きなのでパーツ等を自分で加工できれば
と思い金属加工や溶接工の仕事をしていました。」とのこと。
「様々なものづくりの仕事をしていくなかで、”これを武器になにか自分で仕事を始めら
れないか”とどの仕事に取り組んでいても独立心は常にありましたね。」
そんな中、30歳を目前にして転機が訪れます。
「金属加工の仕事に従事して5年ほど経った頃、これからどうしていきたいかと葛藤して
いるときに父の会社でパートさんの契約切れのタイミングがあると聞いて。さらに父には
普段から仕事の話もしていたので、その時に声をかけてくれたんです。」
そうして漆塗りの世界に入った岩原さん。
「自分の仕事にしていければと入ってみたものの、漆塗りの仕事は奥も深いし、仕事も
そこまでありふれている訳ではないので想像以上に厳しい世界だと痛感しました。
それでもやってみるとすごく楽しい!今までの仕事も楽しくはあったもののそれとは
違う楽しさを感じました。誰もが簡単にできることではないですし、自分の思い
描いているものをかたちにしやすいという満足感もあり、仕事にのめり込んでいきました。」
家業を継がれるつもりはなかった、とのことでしたが今までに取り組まれた仕事は
すべてがものづくりに関係すること。これらの経験があったからこそ、漆塗りの仕事に
対しての想いが強いのだと感じました。
3.独立するまで
お父様の会社に入り独立されるまでの経緯もお聞きしました。
「父の会社にいた頃、仕事に波もあるので新しいことをやったりネットでの小売りを
したらと自分でwebサイトを作って提案したんですけど、あまり魅力を感じてもらえ
なかったんです。会社としては新しいものに抵抗があるというか保守的なところ
があって。」
そんなこともあり岩原さんは、自分のやりたいことや好きなものを作る
作業は就業時間内には一切やらず、休憩時間や終業後、休日にやっていたそう。
「会社の目も気になったので2年目には別の場所に工房を持って取り組んでいたんですが、
自分の工房ということでさらに身が入り、自分の作品以外にも請け仕事を個人でも
するようになったんです。」と言う岩原さんですが、その生活はかなりハードなもの。
「18時くらいから工房に入り朝の3時4時まで仕事をしてました。
同じ頃結婚もしたので生活費や制作・材料費を稼ぐ為にとにかく打ち込んでました。
自分の仕事を終えて3時間、いや4時間は寝られたかな、そこから会社に出社してました。
3年くらい前まではそんな感じでかなりきつかったですね。」
2019年1月に会社を辞めるまでずっと2足のわらじだったという岩原さん。
独立に至ったのは運命的なタイミングでした。
「40歳になり身体もきつくなって個人の仕事も物量的にまわらなくなってきていたんです。
そんなとき、違う業界にいた弟が父の会社に戻ってきたんです。
人数的に弟が入れば自分が辞めても会社としては仕事に支障がない、タイミング的に
今が辞める時なのかと。
そこからはとにかく早かったですね。いずれは独立を、と思っていたのがなかなか
踏み切れなくて。
そう思っていたのが嘘のようにそういうふうにしなければという流れになりました。
いずれはという話や相談はしていたので父は気づいてましたね。
これまでも個人で仕事を取ってきてたので、これだけの売上があるから会社でやらせ
てくれと言えば会社にいても自分の仕事をできるようにはさせてくれたかもしれない。
でも親子だからそういうことさせてもらえるんだ…と思われたくなかった。
それに父も自分もお互いそういうことは一切言い出さなかったし望んでもいなかった。」
そして独立された岩原さん。最初はどんな感じだったのでしょうか。
「不安はあったんですが辞める直前に大口の仕事が入ってきてそれを運転資金に回せた
のでスタートは良かったです。
その仕事に取り組んでいる間もまたさらに大口の仕事が入って…
会社にいながらだとできなかった量の仕事だったので、偶然と言うか奇跡が重なった
感じですね。
最初は絶対苦労する、仕事なんてなかなかないと色々な人から言われていたので覚悟は
していたんですがありがたいことに仕事に恵まれました。
最初のそれらがなかったら今頃売上が足りてなかったのでどうなってたんだろうと
ちょっと怖かったですけどね。」
3,4時間の睡眠時間で何年も仕事に取り組まれていた岩原さん。
今までお身体を壊されなくて良かったというヒヤヒヤと仕事に対する情熱にドキドキを
感じながらお話を伺っていました。岩原さんが会社を辞められたタイミングというのは
なるべくしてなったという感じで、運命というものは本当にあるんだと感じました。
4.家族への想い
「ここに来るまでが大変だった。」と話す岩原さん。
「以前は深夜までずっと働いていたので朝の30分程しか顔を合わせないような生活をして
いたりとか。あとは結婚、出産、育児等のお金がかかる時期の転職で給料が減って
しまったり、殆ど家にはいなかったりで妻にはたくさんの苦労をかけてきました。」
家族の為にと現在は工房の隣に家も建て、顔を合わせる時間は以前より増えたそうで、
工房の中でふたりの娘さんが遊んだり宿題をやったりしていることもあるとお聞きし
微笑ましい気持ちになりました。
「近いから何かあるとすぐに呼ばれちゃうんですけどね」と笑う岩原さんは困った顔を
見せつつも嬉しそうでした。
取材中にも学校帰りの娘さんたちが工房に顔をのぞかせてくれて…すぐ隣にいる安心感。
すごくいいなと思いました。お父さんの仕事ぶりを近くで見ることができる環境、
いい影響を受けられそうな感じですね。
「普通の会社で定時に帰って子どもと遊んだりできるならそのほうがいいのかなとは
思うんですが、自分はやっぱり仕事に打ち込んで結果を出していって、それによって
家族が食べられたり遊びに行けたりと不自由のない生活ができればいいなと思います。
それも愛情表現のひとつなのかなと思います。」
5.今後の展望
「請け仕事の割合が多いので、今後は素材提供を今のまま続けつつjaCHROの商品をもっと
作って取扱いを増やしたいです。
他には木曽平沢という産地と伝統工芸の仕事をかたちはどうであれ残していきたい。
あとは自分たちより下の年代を育てていきたいですね。
この大きな工房には、周りに対しても今自分はここまでやってきたんだというのを
かたちにして見せるツールという役割もあります。職人はかっこいいものだと思って
もらいたい。ちゃんと生活できるしがんばればやっていける。若い人たちにもこの仕事は
夢があるんだってことを見せて引き込んでいきたいんです。」
今後はwebやメディア等を通してもっとたくさんの方に知っていただければとのこと
でした。
今回のブラ旅の取材も快く引き受けてくださってありがとうございました!
6.旅を終えて
たくさんお話を聞かせていただき、さらには実際に漆塗りを見せていただけたりと本当に
充実した時間を過ごすことができました。
今回は木曽平沢の町を回ることができなかったのですが、岩原さんに色々とおすすめの
お店を伺ったので是非次回は観光で行かねばと思いました!!
岩原さんはとても熱量の高い方で、私ももっと自分の仕事に対して真摯に向き合わなけ
れば…!と背筋が伸びる思いでした。
そしてお土産にとすばらしいものをいただいてしまいました。
jaCHROマグネットとキーホルダー…!
マグネットは箱に入っているのが本当に可愛くて、冷蔵庫にマグネット貼ろうと思って
ましたがとんでもない!ちゃんと飾らねば!という素敵さです。
キーリングは色味がとにかく綺麗!キラキラしてて眺めていたくなります。
これを身につけてこれ漆塗りの製品なんですよ!って布教したいですね!
皆様も是非木曽平沢に行った際には未空うるし工芸さんに行ってみてくださいね!
——-取材協力——————————————————————–
未空うるし工芸
〒399-6302 長野県塩尻市木曽平沢1905-7
TEL/FAX:0264-34-2644
TEL: 10:00~18:00/FAX: 24時間受付
通販もあります!
———————————————————————————-
さて次回は…
ブラ旅も3分の1を終えようとしています。
そこでこれまでの旅の振り返りをお届けします。
お楽しみに!
-----------------------------------
採用に関する詳細はこちらから
-----------------------------------