こんにちは!
「ブラ旅47」、早速スタートです。
★☆大和グラビヤのブランディング企画室が日本全国47都道府県の旅に出る企画、
略して「ブラ旅47」!全国各地の食べ物やお土産や工芸品・・・それらを作っている人たちとの出会いや、その体験で感じたことや得たものを旅の記録として綴っています。☆★
第9回目の今回は、宮城県にGO!!
宮城県女川町にある、素敵な手作り石鹸のお店「三陸石鹸工房 KURIYA」さんにお伺いしました。
震災から8年、復興が進んでいる女川町。
最初は様々な想いが頭をよぎりましたが、初めての宮城県訪問という事もあり
「今回は初めて訪れる観光地として楽しみながら取材しよう!」と心の中で決め、
いざ!女川町へ!
仙台市からレンタカーでひた走り、商業施設 シーパルピア女川ハマテラスへ。
ここの一角に「三陸石鹸工房 KURIYA」さんのお店があります。
訪れた日はとても良い天気で、良い風が吹き抜けていました。
「KURIYA」さん発見!素敵なお店です!!
店先には、可愛らしい石鹸が。
統一感のある、ナチュラルなテイスト。
石鹸工房・・・というよりも、美味しいスイーツのお店の様な雰囲気です。
もう見た目がスイーツ!凄く美味しそうです!食べたい!(※石鹸です。)
「三陸石鹸工房 KURIYA」の代表、株式会社アイローカルの厨 勝義さんにお話を伺いました。よろしくお願いいたします!
<石鹸作りの魅力発見>
― 何故、女川町で手作り石鹸のお店を始めようと思ったのですか?
震災の後、ボランティアとして東北に来ました。
元々は翻訳の会社をやっていた事もあり、これから地域を復活させるには「商売」が必要だという事で、人の創業の手伝いを沢山行っていました。
最初のきっかけは震災の翌年である2012年。
仮設の集会場でハーブを育てるNPOの方々が、石鹸を作るワークショップを開いていました。そこで参加されていた仮設住宅のお母さん達の熱気が半端なかったんです。キラキラしていました。やはり女性の方々は少なからず石鹸って気になるみたいで、ワイワイ盛り上がっている様子が印象的でした。
次のきっかけは、震災から3年後の2014年頃。
一時海は酷い事になっていたのですが、1年、2年経つ辺りから養殖等が再開されて、牡蠣とかワカメとか上がり始めていました。ワカメ等は色が悪い物は端っこを切り落として出荷するのですが、捨てられている部分だって栄養価は全く同じなのです。この辺りのワカメは日本で一番品質が良いのに色合い一つでB品扱いになってしまう。その事について考えていた時、むかし海藻石鹸が流行っていた事を思い出しました。
2012年のワークショップで盛り上がっていた記憶もあり、復興支援になるのでは?と考え、漁協の婦人部の皆さんへの支援という形で「漁師の奥さんが作るワカメ石鹸」として石鹸作りを計画しました。
― 最初はご自身で作られていた訳では無かったんですね。
はい。この地域の方々向けの事業として想定していました。
石鹸作りが商売として成り立つかどうかを調べたところ、長崎と石川に「なまこ石鹸」という物がある事を知りました。しかも、とても売れているらしい。この町でそんなに売れたら、それはもう凄いコトだぞ!面白そうだ!とワクワクしました。
ただ、石鹸を作ってくださっていた漁協の婦人部の皆さんには、「漁師の奥さんが作るワカメ石鹸」に対してなかなか興味を持っていただけませんでした(笑)。当時の婦人部の皆さんは高齢の方々が中心だったのですが、石鹸等にこだわりを持つ方も少なく・・・おそらく自分があまり購入しない物が売れるとは思えない という事だったのでしょう。寧ろ若い人達の方が石鹸に対して興味津々でした。
石鹸作りに関しては、自分が率先して学びました。最初は漁協の婦人部の皆さんに教えられるようにする為でしたが、そこで石鹸づくりの面白さと奥深さを知りました。結果として、支援という形ではなく自ら商品を作りお店を構える事になりました。
<全く異なる道を行く という事>
― 以前は翻訳のお仕事をされていましたが、震災がきっかけとは言え、
何故まったく新しい分野である「石鹸工房」に転身されたのでしょうか?
石鹸作りの魅力を発見したという事もありますが、それと同時に、翻訳の仕事はこの先10年はもたないと考えていたからです。
理由は2つあります。
1つ目は、「ili(イリ―)」や「Google翻訳」等の、翻訳できる機械(デバイス)の普及です。これらがドンドン普及してきた場合、人間がやれる部分は無くなってきます。
出版までを含めた翻訳・通訳という仕事は今後、業界の2割程度・・・いわゆるピラミッドの頂点(単価が高い部分)にあたる仕事のみ人間が行うことになると思っています。
― 単価の高い貴重な2割とそれ以外では、具体的にどういう違いがあるのでしょうか?
一例としてですが、出版社の場合、そもそもの日本語のクオリティ等が大切になります。
そして「何を翻訳するのか」が、人間の腕の見せ所。要するに「何の本を、今、日本語にするべきなのか?」という判断ですね。出版社にとって、それが一番大事な仕事です。市場があるのか?社会に良い影響を与えるのか?という事を考える…ここは絶対に機械が取って代わる事ができない領域です。自分は、企業で使う機械のマニュアル等の翻訳を専門で行っていたのですが、この分野は「理解できれば良い」のです。「文章の味わい」とか「今、日本にとって必要か否か」では無く、説明書は「わかれば良い」。その様な仕事の大部分は翻訳の機械でも十分行えるでしょう。そうなっていくと、この仕事に携われる人の数が減っていくと思われます。
2つ目の理由として「クラウドソーシングの登場」です。
クラウドワークスやランサーズ等のサービスが、翻訳業界の市場に入ってきました。
今までは翻訳会社に登録した翻訳者達の中でのパイの奪い合いだったのですが、もっと気軽に登録できるシステムが登場した為、急激に競合が増え単価が落ちていくのを感じました。フィルターが外れた為、ある一定の人材で構成されていた翻訳業界に一気に大量の人材がなだれ込んできたのです。
おそらく、現在このサービスが占めている部分も10年くらい先には機械に取って代わられる事になるかな と考えました。
― AIや機械の進歩が目覚ましい上に業界外から思わぬ競合が現れ、
当時の厨さん自身が翻訳業の先細りを感じていた・・・という事でしょうか?
そうですね。そんな感じで仕事に対して色々と考えていたのと同時並行で石鹸作りの面白さに気が付いた事もあり、改めて「翻訳の仕事を続けたいか?」と自分に問うてみました。自分自身がどう思うか。何を面白いと感じて何を喜びとするか。考えた結果、「この土地で新しい事に挑戦する」事を選択していました。
― 色々な条件が重なった結果ですね。
人が行動する理由は一つでは無いですよね。今の状態は、このコースの先は暗いな。こちらのコースの先は面白そう。それならこちらのコースに移動してみるか・・・という感じで、色々な物事や条件の中から都度選択した結果です。最初は石鹸作りも漁協のご婦人方への支援として模索していたのですが、自分自身がその面白さにハマるとは思っていませんでした(笑)。 あとは、世間の状況と自分の状況との兼ね合いです。当時自分は33~34歳でしたので、再学習してプロフェッショナルになる事を想定した際、物事の転換は早い方が良いと考えました。やはり年を取ってからの転換はグッとハードルが上がります。
― そうですね。年齢を重ねれば重ねる程、新しい事への行動が億劫になると感じます。
それは自然だし、仕方がない事だと自分は思います。若い頃はもっと繋がりたい・知りたい・感じたいと思っていましたが、最近は自分の興味がある事が知りたいと思う様になってきました。年齢を重ねていくと、知りたいと思う事が段々閉じていくのだろうと思います。40代に入った今、自分は60代になろうが80代になろうが、いつでも初心で始められる人でありたいと思っています。それには、まず好奇心を持って面白がる力や「できる」と思い込む力が大切だと考えているので、日々心掛けています。
― 何歳でも初心で始められる人である為、どんな事を心掛けているのでしょうか?
例えばお店で知らないメニューを頼んでみるとか、行った事が無いところへ行ってみるとか、読んだ事が無い女性誌を手に取って読んでみるとか…(笑)。
日々の細かい事からの訓練です。「行ってみる」「食べてみる」「やってみる」という小さな事から全て始まっていると思うからです。
始める時には何が先に繋がっているか誰にもわからず、振り返ってみて初めて物事がスタートしたきっかけに気が付くという。最初はそんなに思い入れが無かったとしても「面白そう」等のちょっとした共感から始まって、「深い想い」は後から付いてくるのではないでしょうか。
― なるほど。日々の生活の中で意識する事が大切なのですね。
<厨さんと三陸石鹸工房KURIYA、女川町のこれから>
― 厨さんの挑戦から始まった素敵なお店『三陸石鹸工房KURIYA』。
よろしければ、これからの展望をお聞かせください。
今後どう展開していくかまだ思案中です。
今すぐではありませんが、「身体を健康的な良い状態にする」という目的に対して、手作り石鹸と女川町の美味しい食べ物を提供する事でアプローチしていく可能性があります。
お客様の中には、石鹸を使用する事で肌が良くなる事を期待する方がいらっしゃいます。たまに「肌の状態が改善されますか?」「色は白くなりますか?」等の質問がありますが、石鹸は基本的に「汚れをきれいに落として肌を清潔にする」為の物なので、添加しない限りプラスαの効用は無いのです。
改めて「きれい」という事はどういう事なのか?本質に遡って考えた結果、「肌がきれい」という事は、「継続して身体が健康な状態」であるという結論に至りました。
今は消費者の中でも日常の食事から生産者や産地に対しての意識が高く、化粧品の代わりに食事に付加価値を求める土壌ができていると感じていた事や、石鹸に余分な添加をしたくないという自分なりの想いもあり、プラスαの効用は女川町の美味しい食べ物で身体の内側から整えていく事を考えたのです。
この土地で培った多くの一次生産者の方々との繋がりを活かし、協力していただく事で美味しい加工品を製造・販売できれば、町としても新しい売り上げになり地域的にも消費者であるお客様にも、win-winの関係が築けるのではないかと思っています。
石鹸というアイテムにとどまらず、一つ先を見据え模索している厨さん。
女川町を盛り上げつつ、常に新たな挑戦を視野に入れています。
「身体を良い状態にする」という目的へのアプローチを伺っていると、何だかインタビュアーである自分もワクワクしてきました!
次にご訪問させていただく時「三陸石鹸工房 KURIYA」は、今とは異なるカタチへと進化している様な気がします。
厨さん、ありがとうございました!
——-取材協力——————————————————————–
三陸石鹸工房 KURIYA
〒986-2261 宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原1-34 シーパルピア女川ハマテラス-8
JR「女川駅」徒歩1分
三陸自動車道・仙台東部道路 三陸自動車道「石巻女川IC」より約25分
営業時間:平日 11:00〜16:00、土日祝 9:30~16:30
定休日:火曜日、水曜日
TEL:0225-25-7191
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次のブラ旅47は、青森県!
伝統工芸である「こぎん刺し」の歴史に触れる事のできた、趣のある旅になりました。
お楽しみに!
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